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            今朝6時の山荘の気温:15℃、小雨。
 
   高校生の時、とても気の合う同級生がいた。いわゆる文学青年だった。会うたびに
  「おまえ ** 読んだか? いいぞ、読んでみろ」と勧める。勧められるままに読んだ
  一冊が夏目漱石の『門』だった。当然、彼はもう読んでいた。
  平凡で退屈な夫婦の日常が描かれ、その中に、禅問答のような不可解な挿話が入り
  こむ。その部分は長いけれど、以下に書き写してみた。
 
  「・・自分は門をあけてもらいに来た。けれども門番は扉の向こう側にいて、叩いて
  もついに顔さえ出してくれなかった。 ただ、『たたいてもだめだ。ひとりであけて
  入れ』という声が聞こえるだけであった。〈中略〉彼自身は長く門外にたたずむべき
  運命をもって生まれて来たものらしかった。(中略)けれども、どうせ通れない門
  なら、わざわざそこまでたどり付くのが矛盾であった。 彼は後を顧みた。そうして
  到底また元の道へ引き返す勇気を持たなかった。彼は前を眺めた。前には堅固な扉が
  いつまでも展望をさえぎっていた。彼は門を通る人ではなかった。また門を通らない
  で済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ちすくんで、日の暮れるのを待つ
  べき不幸な人であった」  (以上、夏目漱石『門』より)

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